著者
柏木 雄太 田中 美佐子 新田 泰生 カシワギ ユウタ タナカ ミサコ ニッタ ヤスオ
出版者
神奈川大学心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要 (ISSN:21855536)
巻号頁・発行日
no.11, pp.11-32, 2020-12-20

本研究では,臨床心理士を目指す大学院生の,学びに関する場面での傷つきにまつわる体験に焦点を当て,大学院を修了するまでの内的な変容プロセスについてのモデルを生成することを目的とした。5つの臨床心理系大学院(第一種指定)を修了した10名を対象に半構造化面接を実施してデータを収集し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的に分析した。その結果,臨床心理士を目指す大学院生は初期に,《臨床心理学文化の入り口に立つ》ことを経験する。ケースの開始と共に《ケースに出る未熟さ》と直面する。中期では〈限界を許せずに抱いてしまう怒り〉などからなる《未熟さから起こる学びの滞り》や,〈構造が守られないことから生まれる傷つき〉が起こる。終期では,《時間経過による不安と焦り》を経験する。また,〈自己変容へのストレス〉などからなる《深化する自己内省に伴う痛み》を経験し,大学院を修了する過程が示唆された。
著者
山内 志保 Yamauchi Shiho
出版者
心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要 (ISSN:21855536)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.39-47, 2015-03-31

感情調整を適切に行なう能力は,対人関係やメンタルヘルス,ひいてはウェルビーイングにまで良好な影響を及ぼす。脳神経科学においても,扁桃体の反応として生じる情動の統制にイメージや言葉を司る前頭前野の機能が関連することが知られている。つまり,クライエントが自身の感情をイメージや言葉で扱うことは感情調整に役立つと考えられる。本研究では,Emotion-focused therapy の理論と介入を通して,クライエントが自身の感情体験を“子ども”として象徴化し,感情調整力を育んだ2つの事例を報告した。考察では,感情に注目した介入とクライエントの変化について検討した。さらに,感情体験の象徴化が,クライエントの感情調整力のどのような側面を反映しているのかを検討した。本研究より,感情の質感を適切に捉えた象徴化と,その感情に対してクライエント自身が抱く感情,そして感情に対するクライエントの態度が,感情調整力と関連することが示唆された。
著者
杉山 崇 Sugiyama Takashi
出版者
心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要 (ISSN:21855536)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.3-16, 2015-03-31

Current studies have revealed that 5-httplr gene would impact emotional and affective pattern through serotonergic neuron system, and have found that SS type of this gene would cause negative emotional response pattern. So SS type of 5-httplr would be reported as “negative gene” by some mass media. But, the word of “negative” as a personality trait means not only emotional response, but also behavioral and thinking patterns and social attitude. In the context of psychotherapy, behavioral and thinking patterns and social attitude would be regarded as phenomena to depend on experiences and learnings, too. This article would try to consider whether or not we could call SS type of 5-httplr gene “negative gene” in psycho-education on Japanese psychotherapy. The result of this article would be that we can do partially.
著者
今井 美沙 Imai Misa 瀬戸 正弘 Seto Masahiro
出版者
心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要
巻号頁・発行日
vol.6, pp.31-44, 2015-03-31

本研究は,ソーシャルサポートを受けている感覚が乏しい不登校経験者は,被援助志向性が低いという仮説に基づき,不登校経験者の被援助志向性を経験がない者と比較することで検討を行った。そしてそのうえで,ソーシャルサポートのうち,どのサポート内容とサポート源が被援助志向性を高め,不登校経験者の適応に影響を及ぼすのか検討した。その結果,不登校経験者は,経験がない者と比べて被援助志向性が低いことが明らかとなった。しかし,サポートを多く受けていることで被援助志向性が高まるという結果は得られず,本研究の仮説は支持されなかった。一方,不登校経験者の被援助志向性に影響を及ぼすのは,家族・友人以外の「その他重要な他者」からの「心理的サポート」,「物理的サポート」であった。そのため,不登校経験者の被援助志向性を高めるためには,このような存在からのサポートを与える環境を整え,それを基軸に他のサポートへと拡大させていくようなアプローチであることが示唆された。
著者
フリン ジェームズ R. Flynn James R. 山田 陽樹 Yamada Haruki 杉山 崇 Sugiyama Takashi
出版者
心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要
巻号頁・発行日
vol.7, pp.49-57, 2015-03-31

この50年間,IQ上昇とテストの再標準化によって,知能指数70以下のアメリカ人の割合が劇的に変化してきた。さらには,知的障害の評価基準が,白人だけに対して標準化された70から,すべてのアメリカ人に対して標準化された70に変更された。実際,知的障害に分類した方が適しているとされる人の割合は,23人中1人という高値から213人中1人という低値に変化した。このような大きな変化があったにも関わらず,心理臨床家は何の反応も示さず,また,テスト発行者も十分な反応を示さなかった。適応行動の障害との相関関係において,知的障害のIQ評価基準はその根拠をまったく示していないと結論づけざるを得ない。この相関関係があればこそIQ評価基準が合理的であるといえるのであり,IQテストはやめて適応行動の障害の直接試験を支持することも十分考慮する必要がある。実際,心理士がクライエントのニーズに合わせてテストを実施することによって,人々は異なるIQテストからまったく違うスコアを得ることができるのである。資料